相続放棄後にしてはいけないこと

文責:所長 弁護士 鳥光翼

最終更新日:2024年08月22日

1 相続放棄後にもしてはいけないことがあります

 民法921条には、次のように定められています。

 

 「次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。

 1 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第602条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。

 2 相続人が第915条第1項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。

 3 相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。」

 

 相続放棄後にしてはらないことは、民法921条第3号に定められています。

 相続放棄後に、①相続財産の全部若しくは一部を隠匿すること、②私にこれを消費することをしてしまうと、単純承認をしたものとみなされてしまい、相続放棄が無効となってしまいます。

 なお、民法921条第3号の「悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき」は、限定承認をした場合のことなので、相続放棄にはあてはまりません。

 以下、①相続財産の全部若しくは一部を隠匿すること、②私にこれを消費することについて、具体的に説明します。

2 相続財産の全部若しくは一部を隠匿すること

 相続財産の隠匿とは、相続財産を持ち去ることのように、その所在を不明にする行為のことです。

 相続人全員が相続放棄をすると、相続人が不在となります。

 その際、被相続人の債権者が相続財産清算人の選任を申し立て、相続財産から債権の回収をする可能性があります。

 相続放棄をした元相続人が相続財産を隠匿してしまうと、被相続人の債権者による債権回収を妨げてしまうことになります。

 なお、財産価値のない相続財産の形見分け程度のものは、隠匿に該当しないとされます。

3 私にこれを消費すること

 相続財産を私に消費するとは、相続放棄をした元相続人が自分の意志で相続財産を処分する行為のことです。

 処分する行為の典型的なものとしては、相続財産を売却することや、廃棄することが挙げられます。

PageTop