相続放棄をした場合、他の相続人への通知は必要か

文責:所長 弁護士 鳥光翼

最終更新日:2024年05月23日

1 相続放棄をする際、原則として他の相続人への通知は不要です

 結論としては、相続放棄をした際には、他の相続人へ通知する必要ありません。

 相続放棄は、各相続人が別々に、単独で行うことができる手続きです。

 そのため、法律上は、他の相続人へ通知をする必要はありませんし、他の相続人と共同して行う必要もありません(なお、相続放棄と似た手続きである限定承認は、他の相続人と共同して行う必要があります)。

 もっとも、相続放棄の実務においては、他の相続人に対して通知しておいた方がよいと考えられることもあります。

 以下、他の相続人と連絡が取りあえる場合と、そうでない場合について、詳しく説明します。

2 他の相続人と連絡が取り合える場合について

 他の相続人や次順位相続人と連絡が取り合える状況であれば、後々のトラブルを防ぐためにも、相続放棄をした旨を伝えておいた方がよいと考えられます。

 相続放棄は、はじめから相続人ではなかったことになるという法的効果が生じます。

 他にも相続人がいる場合に相続放棄をすると、他の相続人の相続分(特に相続債務)に変動が生じますので、相続放棄をしたことを伝えておいた方が後々のトラブルを防ぐことができます。

 また、遺産分割の争いに発展している場合や、トラブルメーカーの相続人がいる場合などにおいて、相続関係から離脱したいときにも相続放棄をすることがあります。

 このような場合も、他の相続人に相続放棄をした旨を伝えれば、今後一切相続には関わり得ないことが伝わりますので、他の相続人からの干渉を抑止することができます。

 次の順位の相続人がいる場合には、相続放棄をすると相続権が移り、相続債務の負担も移りますので、やはり相続放棄をしたことを伝えた方がよいです。

3 他の相続人に連絡をすることが難しい場合について

 長年疎遠で連絡先が一切わからないなど、他の相続人や次順位相続人に連絡をすることが困難である場合には、一般的には連絡先を調査してまで相続放棄をしたことを伝えなくてもよいと考えられます。

 実は、相続放棄の実務においては、他の相続人や次順位相続人と疎遠であり、住所も連絡先もわからないということはよくあります。

 また、もし他の相続人や次順位相続人の連絡先がわかったとしても、無理に相続放棄をした旨を連絡しない方がよいと考えられます。

 相続人同士が疎遠であるケースにおいては、他の相続人や次順位相続人も、被相続人がお亡くなりになられたことを知らないということがあります。

 このような場合、または相続放棄をした旨の通知をしてしまうと、他の相続人や次順位相続人は、被相続人の相続の開始があったことを知ってしまいます。

 そして、他の相続人や次順位相続人は、否応なしに、連絡を受けた日から3か月以内に相続放棄をするか否かを判断しなければならなくなってしまいます。

 そのため、無理をしてまで通知をしない方がよいということもあります。

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